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AI画像を部分修正(インペイント)したら、見えない透かしはどうなる?

AI画像の一部をペイント機能で直しても、見えない透かしやAI利用の記録が消えるとは言えません。インペイント後のSynthID・C2PA・著作権と、人の絵へのAI加筆の扱いを整理します。

AI画像インペイント透かしC2PA著作権

この記事は、生成AI画像の一部を直して広告や商品に使いたい担当者と、自分のロゴやイラストをペイント機能で編集する人向けです。インペイントは画像の指定範囲をAIで生成し直す機能で、人が直接筆で描く作業とは異なります。少し直しただけで、電子透かしやAI利用の記録がなくなるとは言えません。公開前には、残る信号、編集履歴、人の創作的な関与、用途に応じた表示条件を分けて確認します。

たとえば、商品ページ用のキャラクターに手の形の崩れが残り、公開前の最終確認で差し戻された場面です。担当者は指定範囲だけをAIで描き直して見た目を整え、翌日の入稿までに「人が仕上げた絵として出してよいか」「AIを使ったと書く必要があるか」を決めることになります。絵の不自然さが直ることと、AI生成という制作工程が変わることは別です。

逆に、自分で描いた絵の背景だけをAIで追加した場合も、全体を人だけで描いたと説明すると実態とずれます。本記事は公表情報で確認できる範囲を扱い、製品情報は2026年9月に確認しました。実験や検出回避の検証は行っていません。

ペイント機能で直すと、何が変わりますか

範囲を指定する人と、画素を作る仕組みは別です

インペイントは、画像編集アプリの生成塗りつぶしや、画像生成サービスの部分修正など、範囲を指定してAIに描き直させる機能をまとめた呼び方です。一般には、利用者がマスクという編集範囲を指定し、AIがその範囲の内容を周囲や指示に合わせて生成します。「ここを直す」と決める操作は人が行いますが、出力の線や色をすべて人が描いているわけではありません。

製品によっては、周囲とのつながりを整える過程で、指定した箇所以外の見え方も変わることがあります。この変化が起きる原因と抑え方はAI画像が絶妙に微妙、直すと少し変わるのはなぜ?で整理しています。編集後は画像全体を見比べ、元の採用案を保てているかを確認します。

普通の手描き修正と同じ扱いにはできません

ブラシで線を引き直すことと、塗った範囲をAIに描き直させることは、画面上の操作が似ていても異なる工程です。制作メモには「ペイントで修正」とだけ書かず、使用したアプリと機能名を残します。

どの修正方法を選ぶか迷う場合は、AI画像の部分修正・再生成・描き起こしの選び方を確認してください。

電子透かしは部分修正でどうなりますか

SynthIDは画像の画素に埋め込まれる信号です

電子透かしは、見た目には分かりにくい識別信号を画像へ埋め込む仕組みです。Google DeepMindのSynthID発表(2023年8月)は、画像の画素に信号を入れ、対応する検出器で読み取る方式を説明しています。

同発表は、一般的な編集後にも検出できるよう設計する一方、強い加工に必ず耐えるとはしていません。透かしの有無は見た目では判断できません。

各社の公表情報で確認できる範囲

GoogleはGeminiの画像編集に関する発表(2025年4月)で、ネイティブ画像生成によって作成・編集した画像にはSynthIDが含まれると説明しています。元画像の一部を変える編集でも、AIによる編集後の出力に信号が付く場合があると分かります。

部分編集に即した説明もあります。Google PhotosのReimagineへのSynthID適用の発表(2025年2月)は、生成AIで編集した画像に印を付ける一方、編集が小さい場合はSynthIDで印を付けて検出することができないことがあると説明しています。GeminiアプリのSynthID確認機能のヘルプ(2026年9月確認)も、透かしが見つかった場合は画像の全部または一部がGoogleのAIで作成・編集されたことを意味するとし、見つからない理由として編集が小さすぎる場合を挙げています。

SynthID Detectorの発表(2025年5月)は、段階的に提供する検出ツールについて、画像のどの部分に透かしがある可能性が高いかを示すと説明しています。

OpenAIも来歴情報の強化に関する発表(2026年5月)で、C2PAに加えてSynthIDを画像に導入し、画像の来歴信号を確認できる一般向けの検証ツールを案内しました。受け取った側が自分で照合を試せる手段も公開されています。OpenAIヘルプセンターの来歴信号の説明(2026年9月確認)は、付与される信号が製品、モデル、書き出し経路、ファイル形式、作成時期によって変わりうると説明しています。

画像編集アプリについては、Adobeが対象の生成AI機能で作成・編集したコンテンツへ来歴情報(Content Credentials)を付けると説明しています(次章で扱います)。同じ「ペイント機能」でも公表されている信号の種類は提供元ごとに違うため、使っているアプリの公表情報を確認し、確認できない点は不明として扱ってください。

部分編集について言えること、言えないこと

公表情報から言えるのは、透かしが画像の全部に入る場合と一部だけに入る場合があること、編集が小さいと印が付かず検出もされない場合があることです。ただし「小さく直せば安全」という意味ではありません。元のAI画像を下地にしている限り、元の画素の信号や来歴情報は残りえます。

一方で、「選択領域だけに入る」「画像全体へ再び入る」という画素単位の配置は機能ごとに公表されていません。マスクの範囲と透かしの範囲が一致するかは本記事では不明とし、分からないことを「残っていない」と読み替えません。透かしも来歴情報も残っている前提で、公開の可否を決めます。

C2PAは編集後の来歴を記録する場合があります

画像の由来と編集の説明を結び付けます

C2PAは、作成・編集などの来歴情報を電子署名付きで扱う技術標準です。その情報はContent Credentialsと呼ばれます。C2PA公式FAQ(2026年9月確認)では、使われた道具や変更の履歴、素材との関係などを記録できると説明しています。

対応する工程で履歴が引き継がれれば、AIで生成した画像を後で編集した事実が読み取れる場合があります。ただし、すべての操作が自動で記録されるわけではありません。

AdobeのFirefly製品説明(2026年8月)は、対象の生成AI機能で作成・編集したコンテンツや対象素材を含むプロジェクトの書き出し時に、C2PAを自動適用すると説明しています(画素に埋め込む透かしの配置は、この資料の範囲外です)。

保存形式や共有経路によって情報は失われます

メタデータは、画像そのものではなく、画像ファイルに付随して記録される情報です。OpenAIの2026年5月の発表は、この来歴メタデータが形式変換や画面キャプチャなどで失われたり、画像との結び付きが壊れたりする場合を説明しています。同時に、画素に埋め込む透かしは、そのような変更後も残る場合があるとしています。情報が一種類見つからないだけで、AI生成ではないとは判断できません。

C2PAの公式FAQには、ファイルから来歴情報が離れても、電子透かしや画像の特徴との対応付けによって関連情報を再発見できる仕組みも説明されています。

また、AdobeのPhotoshopリリースノート(2026年5月)には、日本語のプロンプトで生成した場合や日本語ロケール版で作業した場合に、Content Credentialsが付かなかった不具合(バージョン27.2〜27.7)の修正が記載されています。日本語環境で作業した画像は、付いているつもりでも記録が残っていない場合があります。印がないことから工程を逆算する判断には限界があります。

操作ごとの透かし・来歴・著作物性の違い

著作物性は、その表現が著作権法で保護される作品に当たるかという意味です。下表は公表仕様と一般論の整理で、個別ファイルを検査した結果ではありません。

操作・工程 電子透かし 来歴メタデータ 著作物性の考え方
AI画像をAIで部分生成し直す 残る場合/編集後の出力に付く場合あり。小さい編集では付かないことも 対応機能では付く場合あり 範囲の指定だけでは人の創作性は確定しません
人の絵にAIで背景などを加える 編集後の出力に付く場合あり AI編集を含む来歴が残る場合あり 元の表現と追加部分を分けて検討します
AI画像に人が筆で加筆する 元の画素の信号が残る場合あり アプリと書き出し経路により異なる 人が加えた部分に保護が認められうる
保存形式の変換や共有用画像の作成 加工後も残る場合あり 失われる/検証できなくなる 形式変換だけでは創作性は生まれません
元画像の画素を使わず人が全体を新しく描く 元ファイルの信号は引き継ぎません 元ファイルの情報は引き継ぎません 新たな表現として判断。必ず権利が生じるとは限りません

どの行でも最初にすることは共通です。使ったアプリ名・機能名・モデル名を記録し、元画像と編集後の画像を別に保存し、公開する媒体と契約の表示条件を確認します。

「透かしが残っているか」「人に著作権があるか」「公開時にAI利用を説明すべきか」は、表の3つの列のとおり別々に確認します。透かしが見つからなかったことは、著作権や説明の要否の根拠にはなりません。

自分の画像がどの行に当たるかを確かめ、公開までに満たせない条件が残る場合は、工程を変えるかどうかを検討します。イラスト全体を描き直したい場合は、AI画像を人の手で描き起こす「アトガキ」に相談できます。AI画像は部分修正ではなく全体描き起こしでのご案内、手描きイラストの部分修正はレタッチのお見積り、写真調は対象外です。

人の絵へのAI加筆と、AI画像への手描き加筆

人が描いた絵にAIを使った場合

自分で描いたキャラクターにAIで背景を追加しても、元の人の創作的な表現まで一律に権利がなくなるという整理ではありません。ただし、背景まで含めて自分がすべて描いたとも説明できません。

文化庁が公表する「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)では、人の創作的な寄与を個別に考える枠組みが示されています。何割の面積を人が描けばよい、という一律の比率では判断しません。

著作物性とは別に、投稿先や契約ではAIを使った範囲の申告を求められる場合があります。背景だけをAIで作った画像も、投稿先の分類では「AIで編集した内容」として扱われることがあります。

AI画像に人が加筆した場合

AIで作ったキャラクターの表情や線を人が描き直した場合、人が加えた創作的な部分について著作物性が認められうると整理されています。ただし、画像全体が人の著作物だとは結論付けられません。

元のAI画像が既存作品に似ている場合、人が手を加えたことだけで第三者の権利侵害の懸念は解消しません。帰属や契約の確認はAI生成ロゴの著作権を自社に帰属させる方法で整理しています。

少し直しても、表示と契約の条件は消えません

透かしが残るかどうかは見た目では判断できません。ここでは検出とは別に残る、投稿先の表示と契約上の条件を確認します。

投稿先の表示と契約条件を確認します

Metaのラベル方針(2024年4月公開・同年9月更新)は、AIで生成した内容とAIで編集した内容を区別し、編集のみと判定したものの「AI info」を投稿メニューへ移す方針を説明しています。部分的なAI編集も情報表示の対象になりうる例です。各サービスの方針は変わるため、公開する時点の規定を確認します。

国内の投稿サイトや公募・コンテストでも、AI生成作品の申告欄や応募資格の規定が設けられている場合があり、部分的にAIを使った画像の分類は規定ごとに異なります。自作として発表する場合の考え方はAI画像をトレースして自作として発表するのは違法?で整理しています。

表示が付くかどうかと、制作を依頼した側や公開先と取り決めた条件(「生成AIを使わない」など)を満たしているかは別です。投稿先でラベルが付かなかったとしても、AIで部分修正した工程を伏せてよい理由にはなりません。

EUの規定は、まず提供する側の義務です

第50条2項は、AIが作った内容だと機械が読み取れる形で印を付ける、生成AIシステムを提供する側の義務です。利用者がディープフェイクなどを公開するときに自分で開示する義務は、これとは別に定められています。欧州委員会のAI Act第50条FAQ(2026年9月確認)は、透明性義務の適用開始を2026年8月2日と説明しています。

第50条の条文(欧州委員会、2026年9月確認)には、標準的な編集の補助にとどまる場合や、入力データとその意味を実質的に変えない場合について、2項の例外があります。この例外はEU市場に関わる提供者側の規定で、画像を公開する側の説明責任や、媒体・契約の表示条件を免除するものではありません。

編集面積が小さいだけで例外に当たるとも決まりません。小さな修正でも、人物の行動や商品の特徴など、見る人が受け取る意味を大きく変えることがあります。

公開に向けて決めること

AI利用が認められるなら、作った工程に合う説明を添えて使います。背景だけをAI生成した場合は「人物は手描き、背景は生成AIで作成」、線を人が修正した場合は「生成AI画像を人が加筆」といった説明が考えられます。

人による制作を求められる用途なら、全体を新しく描き起こす方法があります。元画像の画素を流用せず新たに描く工程では、元の電子透かしやメタデータは自動では引き継がれません。ただし、AI画像を参考にした履歴や、元の図案の権利問題まで消えるわけではありません。

外注を検討する場合の進め方と確認事項は、AI画像の描き起こし外注で、透かしと権利はどうなる?にまとめています。

相談や社内の説明では、元画像、AIで編集した範囲、使用予定の3点を先に整理すると、必要な工程が早く決まります。判断の全体像は生成AI画像の透かしの基礎で確認してください。

編集後・公開前のチェックリスト

  • アプリ名、機能名、モデル名、編集日を記録しました。
  • どの部分をAIで生成し、どの部分を人が描いたか説明できます。
  • 元画像と編集後の版を分けて保存しました。
  • 透かしの配置が不明な点を、推測で埋めていません。
  • メタデータや検出結果を、手描きの証明にしていません。
  • 既存作品との類似と、元画像の使用条件を確認しました。
  • 公開する媒体と契約のAI利用・表示条件を確認しました。
  • 承認する人へ最終画像と制作工程を一緒に渡しました。

よくある質問

インペイントした部分だけに透かしが入りますか

公表情報から言えるのは、画像の全部に入る場合と一部だけに入る場合があること、編集が小さいと印が付かず検出もされない場合があることです。Googleは検出結果を、画像の全部または一部がAIで作成・編集されたことを意味すると説明しています。一方で、マスク範囲と透かしの範囲が一致するかは公表されておらず、断定できません。元画像がAI生成なら、編集の大きさにかかわらず元の信号や来歴情報が残る場合があります。

自分の絵をAIで少し直すと、全部AI作品になりますか

すべてを一律には扱えません。人の創作的な表現の保護、AI編集の来歴表示、投稿先の分類は別の判断です。元の絵とAIで変えた箇所を説明できるようにし、媒体ごとの条件を確認してください。

人が描き直した画像なら、AIを使っていないと説明できますか

元画像を参考にした場合、最終画像の描画と参考資料の作成で工程が異なります。「AI画像を参考に、人が全体を描き起こした」など、実際の工程に沿って説明します。参考段階のAI利用まで禁じる契約や応募規定では、別途確認が必要です。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の権利や表示義務は弁護士などの専門家に確認してください。

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